4. 自治体選挙の統一率
平成27年に行われた第18回統一地方選挙は、全国の自治体の27.5%に当たる議会の議員及び首長が改選された。統一地方選挙で行われる選挙の執行件数は、市町村の合併や長の死亡や辞職、議会の解散などにより、統一地方選挙が執行されるごとに減少してきており、特に平成23年に発生した東日本大震災の影響により、多くの団体が同年実施された前回の統一地方選挙から離脱せざるを得なくなった。
出典 総務省 第18回 統一地方選挙全国意識調査より筆者作成
5. 統一地方選挙の投票率について
第一次世界大戦後、昭和22年に執行された第1回の統一地方選挙の投票率は都道府県知事において71.9%、都道府県議会議員選挙において81.7%、市区町村長選挙において73.5%、市区町村議会議員選挙において81.2%を記録した後、昭和26年に執行された第2回統一地方選挙でそれぞれ最高の投票率を記録した。その後、統一地方選挙が執行されるごとに投票率は低下し、直近の第18回の統一地方選挙は都道府県知事において47.1%、都道府県議会議員選挙において45.1%、市区町村長選挙において49.5%、市区町村議会議員選挙において48.8%と過去最低の投票率となった。
出典 総務省平成27年4月執行地方選挙結果調 P23
6. 鎌ケ谷市内での選挙の状況
広域行政である千葉県の選挙制度において、昭和22年に第1回統一地方選挙にて民選の千葉県知事が就任したが、任期中に辞職したため、統一地方選挙から日程の変更に至った。その後、昭和48年に当時の知事が任期中に死去したことに伴い、統一地方選挙の日程に戻った期間もあったが、昭和56年に当時の知事が辞職したため、統一地方選挙から日程の変更に至り、現在の千葉県知事選挙の日程となっている。また、千葉県議会議員選挙においては第1回から統一地方選挙にて執行されている。
基礎自治体である鎌ケ谷市の選挙制度において、市長選挙と市議会議員選挙は平成11年まで統一地方選挙後半にて実施されていたが、当時の鎌ケ谷市長の辞職により、平成14年に統一地方選挙の9か月前倒しで執行されるようになった。その結果、鎌ケ谷市では地方選挙の全てがそれぞれの日程で執行されるようになった。
出典 鎌ケ谷市 過去の選挙結果
7. 千葉県内選挙状況
千葉県での地方選挙において、統一地方選挙にて首長選挙を執行しているのが54自治体のうち5自治体で統一率9.2%であり、議会議員選挙では54自治体のうち22自治体で統一率40.7%である。その他、統一地方選挙の期間ではないが、首長選挙と議会議員選挙を同時に執行している自治体が3自治体ある。その結果、千葉県内の自治体が執行する県知事選挙、県議会議員選挙、首長選挙、議会議員選挙の4つの地方選挙をそれぞれ執行している自治体が54自治体のうち44自治体であり、残りの10自治体が地方選挙の同時若しくは同日選挙を執行している状況である。
出典 千葉県内各市 HPより筆者作成
8. 統一地方選挙での同日選挙は可能か
首長選挙は自治体の代表を一人選択する選挙であり、住民の付託を得た首長は一人のため、首長の死亡や辞職における任期満了に伴わない選挙を執行することもある。その結果、首長選挙の統一率は13.3%という低い結果に至っている。一方、議会は解散請求や不信任議決による議会の解散といった事例は少なく、議会おける任期満了に伴わない選挙を執行する可能性は低い。その結果、議会議員の統一率は41.8%となっている。その中でも広域行政である都道府県の議会議員選挙の統一率は87.2%と高い状況である。
都道府県における議会議員選挙の統一率が高く、議会解散の要因が少ないことを考慮し、都道府県議会議員選挙が執行される前半の統一地方選挙と基礎自治体の議会議員選挙が執行される後半の統一地方選挙を同日に執行することを検討する必要があるのではと考える。
9. メリット
統一地方選挙の前半と後半を区分けせず、統一することにより、2週間のうちに2度にわたって投票所に向かい、投票する現状から、有権者は1度の投票所への訪問で2つの選挙に参加することができるといった有権者の投票の便宜が図られる。その結果、投票率の高い方に数値は引っ張られ、投票率の向上が想定される。また、投開票に従事する職員や立会人等の人件費、ポスター掲示板の製作や設置選挙に係る費用の縮減することができるといったメリットがある。
10. デメリット
有権者の投票の便宜が図られる一方で、一般市の市議会議員選挙より都道府県議会議員選挙の期間が2日多い9日間のため、告示日が2日ずれる。その結果、選挙人名簿も議会議員選挙時と差がでてしまう等、立候補受付や発送物を含めた自治体の作業が煩雑になる可能性がある。また、複数分の投票箱や投票所でのスペースの確保する必要がある。そして、ポスター掲示場は公共施設だけではなく、地域住民に理解を頂き、設置している箇所が多いこともあり、全ての設置場所においてスペースの確保ができるのかといった課題もある。
11.政令指定都市における道府県議会議員と市議会議員選挙の同日執行の状況
基礎自治体は知事、市町村長、市町村議会議員、都道府県議会議員の4つカテゴリーでの地方選挙を執行するが、「地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律」により、それぞれ公示しなければならない期日が定められている。指定都市の場合、市議会議員と道府県議会議員選挙の期間と執行日が同日であるため、20市のうち、17市が市議会議員と道府県議会議員の選挙を同日に執行している。市議会議員選挙と道府県議会議員選挙を同日に執行することで、有権者は1度の投票所への訪問で2つの選挙に参加することができ、有権者の投票の便宜が図られる。その結果、投票率の傾向として、都市部であるにもかかわらず、40%以上の投票率が記録されている。
出典 指定都市HPから筆者作成
12.千葉県内における県議会議員選挙の投票率
千葉県内における第18回統一地方選挙の県議会議員選挙の投票率は全体で37.01%と低い。都市部に至っては市川市の32.98%を初め、軒並み30%前半という市議会議員選挙以上に千葉県議会議員選挙の低投票率が見受けられ、千葉県政への関心・参加の対策が急務となっている。広域行政である千葉県への政治への参加を高めるにはそのためには、一般市の市議会議員選挙と県議会議員選挙を同日執行することが方法の一つとして考えられる。
出典 千葉県 平成27年4月12日執行 千葉県議会議員選挙 投票調
13.考察
日本国において選挙制度が導入された明治22年には、25歳以上の男性で、なおかつ納税額に応じて選挙権を持つといった制限選挙であった。その後、性別に関係なく、20歳以上の日本人が選挙にて投票できるようになったのは昭和21年からである。参政権を求めて活動してきた先人の想いが、18歳以上の日本人に参政権がある現代の社会の礎であるのではないか。住民の意見を反映することができる政治への参加は地域社会の形成する第一歩として大変重要なテーマであり、投票率の低下が顕著である現状は大変残念である。
基礎自治体である市町村は住民が普段使う道路や下水道、次世代のための教育、高齢者や障がい者・子育て世代のための福祉、更には消防・救急、ゴミ処理等の事業が挙げられる。また、広域行政である県は県道や国道管理、高等教育や高度医療等、より補完性のある事業を展開している。住民の福祉向上のためにはより地方行政に関心を高め、参画を促すことが必要不可欠であり、有権者である住民にとっての便宜を図ることも重要な取組と考える。
現状の統一地方選挙では2週間のうちに2度にわたって投票所に向かい、投票する制度である。都道府県議会議員選挙が執行される前半の統一地方選挙と基礎自治体の議会議員選挙が執行される後半の統一地方選挙を同日に執行することが可能であれば、有権者は1度の投票所への訪問で2つの選挙に参加することができるといった有権者の投票の便宜が図られる。その結果、投票率の高い方に数値は引っ張られ、投票率の向上が想定される。また、投開票に従事する職員や立会人等の人件費、ポスター掲示板の製作や設置選挙に係る費用の縮減することができるといったメリットもある。
課題としては自治体の作業が煩雑になる可能性や投票所やポスター掲示場でのスペースの確保といった課題の他、選挙に携わる体制が自治体ごとで異なるため、より小規模の自治体にとって統一地方選挙を同日にすることが困難なケースもあると想定される。それぞれの自治体の特性が異なることからも、地域の実情に応じた選挙が執行できるよう、「地方公共団体の議会の議員及び長の選挙期日等の臨時特例に関する法律」の弾力的な制定や運用を目指すべきと考える。
おわりに
鎌ケ谷市の選挙は平成11年までは市長選挙と市議会議員選挙は統一地方選挙にて実施されていた。平成14年に約9ケ月前倒しで市長選挙が実施することになったため、市長選挙の9か月後に市議会議員選挙が実施することになる。市長選挙と市議会議員選挙が個別で実施されるようになって、市長選が5回、市議会議員選挙が4回の選挙が実施されている。平成22年の市長選挙では参議院選挙と同日になり、投票率が極端に向上したが、通常の市長選挙においては市議会議員選挙以上に低投票率が見受けられる。そして、千葉県議会議員選挙は統一地方選挙の前半に実施されており、統一地方選挙の後半に実施される鎌ケ谷市議会議員選挙と共に政治への関心と参加を高めることが地域の将来像を描くために必要不可欠と考える。